【日本語限定記事】Instagramでのダイエット広告について思うこと:GLP-1受容体作動薬とそのリスク紹介も含めて

近年、Instagramやその他のSNSでは、著名人やインフルエンサーによるダイエット法が頻繁に取り上げられています。特に注目を集めているのが、運動や食事制限なしで簡単に痩せることができると謳ったGLP-1受容体作動薬の使用です。この記事では、GLP-1受容体作動薬についての基本情報、そのダイエットへの応用、そして使用に伴うリスクについて解説します。

 まずGLP-1(ジーエルピーワン)は、私たちが食事をすると小腸から分泌されるホルモンで、血糖値の上昇に応じてインスリンの分泌を促すことで知られています。このGLP-1の作用を模倣したのが、GLP-1受容体作動薬です。代表的な薬はビクトーザ®、トルリシティ®、オゼンピック®、リベルサス®です。これらのいくつかが一時期、Instagram広告として私のタイムラインに毎日のように流れてきました。一体なぜでしょう。この薬は当初は2型糖尿病の治療薬として開発されましたが、食欲抑制や胃の排出を遅らせる効果もあることから、ダイエット目的での使用においても注目されてきたようです。

 SNSでの広告を通じて(1)、特にサクセンダやビクトーザなどのGLP-1受容体作動薬が、ダイエット目的での保険適応外での使用が増えているようです(2)。薬を使用する多くのひとが、運動や厳しい食事制限をせずに体重減少を実感していると報告しています。

 しかし、このようなダイエット目的での使用はFDAや各国の医薬品規制機関から正式には認められておらず、2023年の研究ではセマグルチド(リベルサス®)に関する腸閉塞のリスクについての注意喚起がなされています。さらに、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学の研究では、体重減少目的でのGLP-1受容体作動薬の使用が膵炎や腸閉塞、胃不全麻痺のリスクを増加させることが示されました(3)。これらのリスクはまれながら、使用が広がるにつれて、潜在的な危険性が高まる可能性があります。また、Mayo ClinicのM. Regina Castro 医師はGLP-1薬がどのようにして体重減少につながるかは明らかではないと答えています(4)。
 日本においては、2020年頃からSNSを通じてGLP-1受容体作動薬のダイエット効果が広告されていますが、これに対し医師会や製薬会社、国民生活センターなどからは注意が呼びかけられてきました(5)。厚生労働省は、医療広告ガイドラインの見直しを行いました。GLP-1のようなダイエット用に使用することが未承認である医薬品の自由診療に関して、未承認医薬品であること、入手経路等、.国内の承認医薬品の有無、諸外国における安全性に係る情報、未承認医薬品等は医薬品副作用被害救済制度等の救済の対象にならないことについての記述が広告やWebサイトに記述をする必要であるということが令和6年1月29日に追加されました(2)。

 ダイエット市場におけるGLP-1受容体作動薬の位置づけは、依然として大きな注目を集めています。美容と健康の境界線上にあるGLP-1受容体作動薬のダイエット利用は、多くの利点を提供しながらも、使用には慎重な検討が必要です。医療用途としての適正な使用を確保すること、そして消費者がリスクを正しく理解し、安全に薬剤を使用できる環境を整えることが急務です。

 一方で、スタートアップ企業やベンチャー企業がオンライン診療やオンライン処方を推進し、社会をより便利にしようとする動きも見られます。これらの新しい取り組みは、医療のアクセスのしやすさを高め、患者にとっての診療の選択肢を広げる可能性を秘めています。実際に仕事やプライベートで忙しい私たちは、健康維持に対しての時間を無意識的には取ることができません。しかし、これらのオンライン診療・薬処方などの革新的なサービスはスタートアップの新規事業として開発されています。これらの事業拡大が日本社会のUpdateするきっかけにもなりうることも間違いないのですが、今回前半に紹介した一部の組織が誤った方法で広告宣伝をしてしまうことによって、ヘルスケア業界に対する消費者からのイメージ・医師からのイメージ・研究者からのイメージ・総合的に悪影響を与えてしまうこともあります。そのため事業者は今回改訂されたルールを慎重に確認をする必要がありそうです。

*Reference*

  1. Meaculpa108. (2021). 糖尿病患者のための治療薬を"ダイエット用"として勧めるやばい広告が出回っている「医師会や製薬会社が警告を出しています」
  2. 医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会. (2024, January 29). 「医療広告ガイドライン」及び「美容医療サービス等の自由診療に おけるインフォームド・コンセントの取り扱いについて」 の改正について. 「医療広告ガイドライン」及び「美容医療サービス等の自由診療に おけるインフォームド・コンセントの取り扱いについて」 の改正について
  3. Sodhi, M. (2023, October 5). Risk of Gastrointestinal Adverse Events Associated With Glucagon-Like Peptide-1 Receptor Agonists for Weight Loss. JAMA Network.
  4. Castro, R. (2022, June 29). GLP-1 Agonists: Diabetes Drugs and Weight Loss. Mayo Clinic
  5. Castro. (2023, October 11). 糖尿病治療薬の「GLP-1受容体作動薬」は注目されている薬 美容・ダイエットを目的とした適用外使用に対し注意喚起. 糖尿病ネットワーク

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